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日々是勉学


by rotarotajp
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学問のすすめ

 尾崎行雄氏は福沢諭吉氏に教えを乞いに行った時のことを自伝に書き残しているそうであります。(わき立つ民論:ちくま学芸)
 その時諭吉先生は鼻毛をむしりながら
「君はいったい誰に読ませるつもりで著述をしておるのかね?」
 尾崎氏答えて曰く「大方の識者にみせるためです」
 諭吉先生「馬鹿!猿にみせるつもりで書け。俺などはいつも猿にみせるつもりで書いているが、それで丁度いいのだ」と、いって、せせら笑ったそうです。
「人の上に人をつくらず」の先生の言としては、なかなか小学校などで紹介できるセリフではありませんが、憲政の神様、尾崎行雄、これを聞いて「実用的著述の極意」と大感心だったそうですから、人を喰うにも程があるという所でしょう。

 フランスの著述家A.トクヴィルは「アメリカの民主政治」(講談社学術)の中に、大衆は簡単だが間違ったことを好み、難しいが正しいものを忌避する、といったことを書いています。世紀のデマゴギー、アドルフ・ヒトラーはきわめて直裁に「大衆には重点を絞って、継続的に聞かせる必要がある」と、その大衆の目に触れることを前提にした大ベストセラー本「わが闘争」の中で述べています。(戦時宣伝の項)

(ヒトラーの宣伝は、彼が芸術家志望であった事と結びつけて考えられていますが、わが闘争の記述にもあるように、実際の彼は実利的で、宣伝は手段と割り切っていたようです。(宣伝は美学青年を満足させるためのものではない云々)東部戦線で、とある将軍が一部隊を登山に従事させ、その険しい山頂にハーケンクロイツの旗を掲げさせたと自慢気に語ったところ「イギリス人のようなことをするな」と兵士の命を軽んじた行為に立腹したそうです)

 レーガン氏やブッシュ・ジュニア氏が大統領になり、「コナン」や「ターミネーター」のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が州知事になる。ある種の人々には冒涜以外の何モノでもないことかもしれません。
 テレビ討論でJFKに負けたニクソン氏は、次の選挙では陣営にTV関係者を迎え入れて万全の態勢を整えましたが「テレビのようなまやかしに頼るなんて」と愚痴をこぼすことしきりだったそうです。

「民衆はその意に反してこれを救ってやらねばならない」
 これはナポレオン一世の御言葉。

 薬害肝炎者のリスト。
 当時の政治家・行政官は、これを一般に知らしめれば、感情的、かつ激越な反応が起こって、行政、製薬会社の業務に支障アリと判断したのでしょう。感染の可能性のある人の数など、血液製剤を必要とする全体の患者の総数に比べれば微々たるもの。
「大衆はその辺のところがよくわからん。困ったものだ」と頭を掻く姿が想像できるようでありますが、何故か不愉快になるのはこちらが責任のない大衆の一人だからでしょう。無論、肝炎治療の機会を逃した人にとっては二つとない身体の事ですから、厚生省は100%役に立たなかったということになります。

 福沢諭吉先生の境地に達するのは実に難しい。
by rotarotajp | 2007-10-28 16:52 | 時事