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日々是勉学


by rotarotajp
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総統

ヒトラー最後の12日間を観て、改めて今「我が闘争」(角川文庫)を読み直している。部分部分において退屈である事は否めない。全般に理路整然としているようであるが、時折ひらめく特定民族への憎悪が、どうにも引っ掛かるのである。Rotaはユダヤ系の友人を持った事がないので、一体ユダヤの何がそれほど苛立たしいのかが理解できず、そこに断絶が生じる。それが不愉快で、彼が羅列する「犯罪」に実際の裏付けがあるのかを、その折々に考えさせられる。ヨーロッパの古い外観を残す都市の片隅には、時折ゲットーらしき所が残っている。周囲に比べて小さな家がひしめきあう一角などが、あとで都市の案内書などを紐解くと大抵そうだ。そこでユダヤ民族は、キリスト教徒が倫理的に抵抗を感じる仕事を引き受けて生活を営んできた。ヒトラーの言及はそうした千年余の中の侮蔑、差別が結晶したものであろうか?あるいは実際に、彼が信じたような敗戦時「背中を刺す」ような行為がドイツ在住のユダヤ・コミュニティーの中で組織だってあったのだろうか?一民族の粛清は理由のいかんを問わず、今の観念においては許されざる事であるが、一つの存在を断固否定する「意思」の生成過程には興味が湧く。
ところでカラー映像のドキュメンタリーなどを見ると、実にヒトラーの存在は際立っている。背後に控える黒と白の親衛隊員、ヒトラー自身は明るいカーキか、白色のコート。腕には赤、白、黒のナチ腕章。演出もイベントごとに見事。花火とサーチライトの中を、ナチ式の敬礼をしながらオープンカーで進む総統。熱狂する大群衆が彼のゆく道に花束を投げる。ここでも赤と白と黒の旗が所狭しと翻る。開戦前の実績はケチのつけようがない。インフレを解消し、三人に一人が失業するドイツを立て直した。ぐたぐたの敗戦国に軍隊を再建し、一兵も損なわず失われた領土を取り戻し、あまつさえオーストリアを併合して大ドイツを創り上げる。大ドイツ国民はフューラー、アドルフ・ヒトラー個人に忠誠を誓う。こうした人物を否定する方法は?チャップリンの方法以外にはあるまい。偉大性を茶化し、笑い飛ばすのだ。
by rotarotajp | 2006-02-10 12:20 | 私事