日々是勉学


by rotarotajp
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大戦 TheGreatWar

「八月の砲声」(TheGunsOfAugust)バーバラWタックマン(ちくま学芸文庫)上下
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Guns_of_August
の、下の途中まで読みました。視座が少々変な所にあって面白いですね。第一次世界大戦ものといえば「サラエボの銃声」「黒い手」から始まるのが一般的でしょうが、本書では英国王エドワード七世の葬礼から始まります。帝国主義の君主たちが集う美しく陰鬱な一幕です。
 サラエボの暗殺劇は僅か半ページ。
 戦争準備によってほとんど機械的に開戦となったのだという著者の歴史観を際立たせる為の構成と思われます。

 本書は全般にドイツに厳しく、連合国、特にフランスに対する視線が柔らかいようにも感じました。(途中意図してかせずしてか、あるいは翻訳上の言葉の綾か「反動」というイデオロジックな言葉が出ていて、興醒めしました。こうした書物で絶対に使ってはならない種類の言葉で、もし翻訳上のミスなら、残念ながら本書の価値を大いに削いでいると思います)

 中立国ベルギーのアルベール国王は大方の予想を裏切ってドイツ軍を迎撃。ドイツ軍は意外な抵抗を受けて暫時停滞。やがてドイツ軍による一般市民の無差別処刑へと事態は発展します。

 ヒトラーのドイツも同じ右回りの作戦を取りましたが、低地地帯の争奪は太陽王以前の時代からの伝統。グーグルアースなどでぼんやり眺めるとドイツからパリに向かう直線をベルギーがドンっと塞いでいる。しかもベルギー南端からアルザスまでフランスの要塞線が築かれているとあっては、まあ、ドイツの立場に立てば先手を打ってベルギーに侵攻したくなるのもわかるような気がします。「中立」というのはあくまで抽象的な概念に過ぎません。例えば日本はソ連と不可侵条約を結びましたが、結局45年になって攻められています。こうしたソフトなものはそれを保障しうる軍事力があってこそのことで、生命を預けられるようなものではありません。あらゆる国際条約は互恵の関係でなければ成り立たないのだろうと思います。このベルギーの「中立」に関しては、現代の日本などを連想しつつ、特にそのことを強く思います。ドイツとしてはドイツが不利になったところで中立国ベルギーがフランスやイギリスの軍隊を引き入れたなら、逆に自分が包囲されることになります。著者は先制してベルギーに侵攻したドイツ幕僚団の判断を責めますが、炉は見当違いの意見だと思いました。

 さて・・・
 下巻「ルーヴァンの火焔」は本書中でも最も印象に残る一章ではないかと思います。詳細はぜひ本書を購入して御確認ください。色々と不満はありますが名著には違いないので、決して損はいたしませぬ。

 「すべての戦争の母」「大いなる戦争」世界大戦。地表の殆どを制覇した欧州の内戦、植民地を巻き込んで、あらゆる国、民族?が影響を蒙りました。第二次大戦は第一次大戦の尻尾といってもいいほどです。
 感傷的で、繊細で、戦争の描写が投やりで、上品な嘲笑のようにも思える本書。しかし最近読んだ本の中では白眉でした。
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by rotarotajp | 2007-10-22 21:34 | バロック